Q&A

1.白内障といわれましたが、ずっと放っておくとどうなりますか?

だんだんに進行して、少しずつ視力が低下します。すぐに手術が必要な場合もありますが、手術をしないで様子を見ていく場合次のような注意が必要です。

①白内障の進行が原因でおこる緑内障に注意する必要があります。

白内障(水晶体の濁り)は一生を通じて徐々に進行し、水晶体の大きさがだんだんに大きくなります。目の中で小さな風船がふくらんでいくような感じです。このため眼内で作られる房水の流れが悪くなり緑内障を引き起こすことがあります。この緑内障は自分で発見するのは難しいので、眼科医による診察が必要です。

②水晶体融解症に陥らないよう定期的な診察が必要です。

著しく進行した白内障(過熟白内障)では水晶体の内容物が溶け出し、重傷な緑内障や眼内炎を引き起こすことがあります(水晶体融解緑内障)。放置すると失明に至る場合があります。手術はしたくない、あるいはしないと決心した方でも、進行した白内障をお持ちの方は白内障の進行の程度を診てもらう必要があります。

このように白内障は手術するしないに関わらず眼科での定期的な診察が必要なことがわかります。

2.ゴミのようなものが眼の前に飛んで見えてわずらわしいのですが

眼球の中の硝子体という組織が老化して縮んでくるためにゴミが飛んで見えるようになります。蚊が飛んで見えるようにも見えるため「飛蚊症」と呼ぶこともあります。老化で生じるものなので、ほとんどの人が一生の間に一度は経験する症状でもあります。硝子体だけが縮んだ場合は大きな病気に発展することはないので、「ゴミや糸くずが飛ぶ感じ」に慣れていくしかありません。ただし、硝子体が老化で縮むときに網膜血管を引っ張って硝子体出血を来したり、網膜裂孔を生じて網膜剥離に発展する事がありますので、飛蚊感を自覚したら眼科で散瞳剤で瞳(ひとみ)をひろげたうえ詳細な眼底検査をしてもらいましょう。

飛蚊症の精査では「散瞳検査」が必要です。散瞳剤が効いて瞳が開くまで20分から30分かかり、検査後も散瞳状態が4~5時間は持続します。時間に余裕を持って受診し、検査後もすぐには運転できないので、自分では車の運転をしてこない方がよい場合があります。

3.子供の近視をなおしたり進行を遅らせることはできますか?

できません。近視は眼球(眼軸)の成長にともなって遠くの物が網膜の手前にズレて像を結ぶ軸性のものがほとんどで、いったんズレると眼球の成長が続く20才ぐらいまで少しずつ近視が進行することが多く、これは成長期の身長や足の大きさなどと同じで薬物やトレーニング、食生活や生活習慣などでコントロールすることは困難です。

また、メガネをかけてもかけなくても眼球の成長は続きますので、メガネを我慢しても近視の進行を遅らせる効果はなく、逆にメガネをかけたから近視が進むというわけではありません。メガネは学習や、社会生活を営む上で必要となってくるものです。必要となった時点で眼科医と相談の上、その時の生活にあった眼鏡処方箋を発行してもらうとよいでしょう。

調節の異常で起こるいわゆる「仮性近視」は極々まれで、これは近視ではなく調節緊張症で全く別の治療が必要となります。

4.過矯正と眼精疲労について教えて下さい。

近視だった人は30歳~40歳ごろから水晶体の老化とともに近視度数が徐々に減っていきます。近視が減っていいこともありますが、困ることもあります。それは、眼鏡もコンタクトレンズも度数が強すぎる過矯正という状況が生じるからです。

このメガネの度数が強すぎる過矯正を放置すると、知らない間に非常に目が疲れたり、重症なケースでは頭痛や吐き気などを起こすことがあります。また、目に疲れがたまると涙の分泌が減って、ドライアイになり、このドライアイによってまた目が疲れやすくなるといった悪循環におちいることもあります。

過矯正への対策は眼鏡やコンタクトレンズの度数を弱くする、パワーダウンすることです。ただし、目が疲れているときのパワーダウンは、目の状態が不安定なので簡単ではありません。何度か通院して眼鏡の装用訓練をくり返し、間違いのない度数をさぐっていく必要があります。また、コンタクトレンズ装用者はコンタクトレンズと眼鏡の両方の度数をバランスよくパワーダウンしていかないと、目の疲れが改善されません。

近視の方は30歳を過ぎて目の疲れを感じたら、眼鏡やコンタクトレンズが過矯正でないかチェックしておく必要があります。とくに、デスクワークやパソコンなど近方作業を長時間行う方は過矯正で目の疲れが生じやすいので要注意です。強すぎる眼鏡やコンタクトレンズは目によくないと思ってください。

5.コンタクトレンズを初めて装用してみたいのですがどうしたらよいでしょう?

コンタクトレンズは心臓ペースメーカーなどと同じ「高度管理医療機器」です。購入、装用には次のような段取りが必要です。

①まず医師の診察を受けて、コンタクトレンズを装用しても安全かどうか診断してもらう必要があります。
②安全と判断されたら、コンタクトレンズ処方箋を発行してもらいます。
③処方箋の有効期間内にコンタクトレンズ販売所でコンタクトレンズを購入します。

医師の診察とコンタクトレンズの度数決定には通常1時間以上かかります。初めての方の場合、危険性の告知や装用練習にさらに時間がかかりますのであらかじめ余裕を持って受診されるのがよいと思います。

眼鏡と違い、コンタクトレンズは眼にとっては異物ですので、装用することによって眼の表面で角膜障害がおきたり、涙液不足、酸素不足が生じます。また、角膜知覚が低下するので、眼表面の傷を自覚しにくくなります。安全に装用を続けるには、自覚症状に頼らず、現在の装用スケジュールが適切かどうか、眼を傷めていないかを定期的に眼科医に診てもらうのがよいと思います。

6.点眼薬のつけ方を教えてください。

点眼方法は人差し指で下まぶたを下げて白目とのすき間に点眼する「あかんべー法」と握りこぶし(げんこつ)をつくって、下まぶたを押さえて目を閉じにくくして点眼する「げんこつ法」などがあります。上を向くか、あおむけの姿勢になって、点眼ビンは斜めにしないで垂直に立てて持つのが理想的です。

点眼ビンの先端がまぶたやまつげに触れないようにして、点眼する滴数は1滴から2滴で十分です。点眼後は5分程度目を閉じるか、目頭を押さえるのが良いです。まばたきをパチパチとたくさんするのは逆効果です。

2種類以上の点眼薬をさすときは5分から10分程度間隔を開けましょう。点眼薬の有効期間は開封後約1ヶ月です。古い点眼薬には雑菌が入り込んでいますので使わないように。結膜炎がうつることがあるので点眼液の貸し借りはないように。

1回の点眼でまぶたに貯まる点眼液の量は1滴の4分の1以下です。あまりたくさん点眼してもあふれて貯まりきれず、かえって目の周りの皮膚炎を起こす原因になります。ホッペタをあまり濡らさない点眼が上手な点眼です。

7.屈折矯正手術について教えてください

近視や遠視、また乱視などを手術によって軽減する方法です。現在一番普及しているのは近視矯正手術です。LASIK(レーシック)と呼ばれる近視矯正手術は精度が高く、視力が安定するまでの期間が短く、痛みも少ないことから広く普及し、いまや屈折矯正手術の代名詞となっています。

LASIKではエキシマレーザーと呼ばれる特殊なレーザーで角膜を面状に、数ミクロン単位の薄さで削り、角膜全体の厚さを調整することで近視や乱視を減らすことができます。入院の必要はなく日帰り手術が可能です。麻酔の注射はなく点眼麻酔で行います。手術当日の眼帯も必要ないことがほとんどです。

注意点としては、すべての人が受けられる手術ではないことで、強度近視や乱視が強い方、円錐角膜などの病気がある方は手術の適応にならない場合があります。また、手術を受けられても40歳以後は老眼になり、近くのものが見にくくなるという現象はさけられないため、一生メガネをかける必要がなくなるわけではありません。手術の適応と限界をよく理解した上で、相談されるとよいと思います。50歳~60歳の方にはおすすめしていません。

屈折矯正手術は保険適応ではなく、すべて自己負担となります。負担額は施設により異なります。伊藤眼科では震災の影響で現在LASIKは行っていませんが、適応検査を行って安全にLASIKが行える目かどうかの診断を行うことができます。60歳ぐらいのご高齢でLASIKを行ってしまってから、近くが見えにくくなって相談に来られる方がおられます。高齢の方は白内障手術を行うことで近視を矯正することができます。また多焦点レンズにより老視の治療も可能になってきました。術前によくご相談されることをおすすめします。

追記;白内障手術の際に用いる「多焦点眼内レンズ」(保険適応外、片眼45万円 手術、眼内レンズ代を含む)の扱いを当院でも始めました。自由診療となりますが、これまでの単焦点レンズに比べ眼鏡の必要頻度の軽減が期待できます。

8.多焦点眼内レンズのメリット、デメリットを教えてください

白内障手術の際に挿入する眼内レンズはこれまで単焦点レンズが主流でしたが、最近では多焦点眼内レンズが登場し、自分の生活スタイルに応じて眼内レンズを選択できる時代となりました。単焦点眼内レンズでは術後に、運転用のメガネや、老眼鏡が必要になることが普通でしたが多焦点レンズでは、遠くの物も、近くの物も、両方見えるという特徴があるので、老眼鏡の必要がなくなるか、必要性がかなり減るというメリットがあります。

デメリットは中間部(1.0m前後)ですこし見え方の質が落ちる部分があったり、夜間の物の見え方が単焦点レンズに比べてにじみが多く出ることですが、多くは慣れることで不自由さを自覚することは減っていきます。また乱視が多い方も適さない場合があります。

保険適応ではなく自由診療になりますので手術代、多焦点眼内レンズ代、術後の診察代などすべて自費となります(当院では片眼45万円 ただし手術後1年間の診察代、薬代を含む。)生命保険など民間の保険から手術代の一部が支給される場合があります。いずれにしても高額ですが、白内障手術後に眼鏡なしで遠くの物も、近くの物も、両方見えるようになりたいと希望する方には朗報で、新たな選択肢が増えたことになります。

老眼鏡(近用眼鏡)を使うのに慣れている方は、従来通り単焦点レンズで十分と思います。老眼鏡を使うことに抵抗がある方や、老眼鏡無しで近くをよく見たい人が対象となります。先進医療の指定を受けた施設では手術代(レンズ代含む)のみが自費で、術前検査、術後治療に保険が適応されますので自己負担がわずかですが軽減されます。

9.市販の目薬と眼科で処方される目薬の違いを教えてください

市販の眼薬は弱い薬効成分が何種類か混ざったものが多く、薬効とは関係のないつけ心地を良くしたり逆にスースーしたりする刺激成分が混ぜられています。点眼すると気持ちいいのですが病気を治す力は弱いので1~2週間点眼して症状が改善しないときは眼科を受診して診察を受けたほうがよいです。市販薬を長期期間点眼しすぎると逆に病気が悪化したり、点眼薬にふくまれる防腐剤による悪影響を受けることがあります。

眼科では診察の結果、病気が見つかったときに病気を治したり、病気の進行を遅らせる目的で点眼薬が処方されます。薬効が強いので必ず医師の指導のもとで使用する必要があります。薬効優先に作られているので、つけ心地が悪かったり、しみたりする場合がありますが目のために必要な薬の場合は少しがまんする必要があります。

防腐剤の含有程度はわずかですので、開封後の有効期間は1ヶ月程度と考えてください。開封した日時を点眼ビンに書いておくと良いでしょう。(※開封後の有効期間は1週間のものや3週間などいろいろあります。)古くなった点眼薬は使用しない方が良いでしょう。

10.なみだ目はどんな時に起こりますか?

おおまかに言ってなみだ目の原因は3つあります。

①眼の表面が荒れているとき。(ドライアイ)

なみだ不足、ドライアイなどで角膜などの眼の表面に傷が付くとゴロゴロしてなみだが出ますが、これは身体が角膜の傷を治そうとする反応です。治療としては人工涙液の点眼で眼の表面の傷を治すことがおすすめです。

②なみだの出口である鼻涙管が狭かったり閉塞している場合。 (鼻涙官閉塞)

なみだは鼻涙管を通ってのどに流れていますが、鼻涙管が詰まるとなみだは行き場を失ってあふれてきます。治療は細いシリコンチューブを約1ヶ月間鼻涙管の中に留置して、狭かったなみだの通り道を広げることで症状が改善することがあります。

③白目の表面(結膜)にシワが増えた場合。(結膜弛緩症)

しろめの表面には透明な膜(球結膜)がありますが、加齢によりシワが増えます。このシワの一部が鼻涙管への出口をふさぐことがあり、涙目になります。治療はシワの一部をつまんで切り取ることで症状が改善することがあります。

11.冬になると目がごろごろして充血するのはなぜですか?

空気が乾燥することと、気温が下がることが関係します。目を潤している涙の約10%が目の表面から蒸発していますが、冬は空気が乾燥するため蒸発が亢進し、涙不足が生じます。涙が不足すると、摩擦が増えてごろごろする症状が現れたり、目の表面に炎症や傷ができて充血します。

また、気温が下がるとまぶたのマイボーム腺から出る油成分が固まってしまい涙の上にうまく広がって油膜を作ることができなくなり、涙の蒸発を防ぐはたらきが低下するため、いっそう乾燥するようになります。冬の空気の乾燥と、気温の低下で普段はドライアイでない方も一時的にドライアイ状態になることがあります。とくに、コンタクトレンズを装用する方は装用しない人に比べいっそう乾燥する事が知られており、コンタクトレンズによる眼障害が冬に多い理由がここにあります。

治療は対処療法で、炎症を抑える点眼薬と人工涙液を点眼することです。ドライアイがある方は人工涙液の点眼を冬の間は継続する必要があります。コンタクトレンズ装用者は冬期間は自分の目の乾燥状態を眼科医で確認したうえで、乾燥が著明であれば、普段より控えめな装用スケジュールを組んだり、人工涙液の点眼を併用したりして眼障害の予防に心がけましょう。

12.コンタクトレンズの洗浄では、こすり洗いは必要なのでしょうか?

はい、必要です。こすり洗い不要と書いてある洗浄・保存液でもこれを鵜呑みにしてはいけません。現在最も多く使われているMPS(一液で洗浄・すすぎ・消毒・保存のできるケア用品)は殺菌力が弱いので、漬け置きしただけでは十分に病原菌を減らすことができません。こすり洗いをすることによってレンズについて病原菌や汚れの大部分(80%程度)を落とすことができるのです。

MPSは装着時に液がレンズについたまま目に入れることができますが、逆に言うと目に入れても問題ないくらいの弱い殺菌力しか持たないことがわかります。安全にコンタクトレンズを使用するにはワンデータイプ以外はハードでもソフトでも、はずしたときのこすり洗い(20秒以上)を毎日実行してください。

13.ドライアイとはどんなことをいいますか?

なみだ不足で眼が乾燥しておこる乾き目のことです。なみだが出にくい体質の人に起こりますが、なみだの量が正常でも冬の季節や職場環境などで空調により空気がとても乾燥すると一時的にドライアイになることがあります。
目の表面はなみだが不足するだけで傷が付いて角膜炎が生じ、ゴロゴロしたり赤く充血したり目の奥が痛くなったりします。また、眼表面が荒れてザラザラしますので、まぶしく感じたり視力が低下したり目が疲れやすくなったりします。

ソフトコンタクトレンズ装用者はレンズ自体が眼の表面のなみだを吸収してしまうため必ずドライアイ状態になります。今後秋から冬にかけては湿度が下がって乾燥しますので、どんな方でもドライアイにある可能性がありますので、ゴロゴロ感や充血、眼の疲れを自覚したら、眼科を受診してみてください。
車の運転中にドライアイ状態になり、眼表面に傷がついて強い痛みとなみだ目が起こり、運転が危険になることがあります。エアコンの風向きに気を遣い、人工涙液の頻回点眼をおこなって眼が乾かないよう対策を心がけましょう。

14.40歳を過ぎたら目でどんなことに気を付けたらいいですか?

【40歳を過ぎたら緑内障検診を】
最新の疫学調査で、日本人の40歳以上の18人に1人は緑内障であることが判明しました(有病率6.8%)。しかし、驚くことに実際に緑内障として眼科で治療を受けているのは、このうちわずか2割で、8割は未治療なのです。緑内障は「視野が欠ける病気」で「放置すると失明につながる危険がある」病気です。

また、「自覚症状が現れにくい」という特徴があり、かなり進行してから眼科を受診される方もいます。緑内障は進行性の病気であり、一度狭くなった視野は残念ながら元に戻りません。早期発見が大事です。眼圧が高くない正常眼圧緑内障が72%を占めるため、早期発見には眼圧検査だけでは不十分です。眼底検査でも初期の緑内障のすべてをとらえることは困難なので、視野検査を含めた眼科医による精密検査が必要です。40歳を過ぎたら眼科を受診して「視野検査」「眼圧検査」「眼底検査」を受け緑内障の早期発見に努めましょう。

15.眼鏡とコンタクトレンズではどちらを先に作ればよいですか?

【第一選択はメガネ】
まずメガネです。コンタクトレンズで目を傷つけてしまったときは即刻はずさないと、最悪失明のおそれがあります。コンタクトレンズ利用者はメガネも常備しておき、異常を感じたらすぐメガネに切り替える用心深さが必要です。

16.コンタクトレンズ装用で最も気をつけることは何ですか?

【コンタクトレンズは長時間のつけすぎ厳禁】
最も多いトラブルは長時間のつけすぎによる角膜障害です。コンタクトレンズにより角膜表面に傷、涙液不足、酸素不足が起こります。早めにはずして酸素不足を解消する時間をとりましょう。週に2日程度コンタクトレンズを休むのも良いことです。こんな時もメガネがあれば役立ちますね。コンタクトレンズ一辺倒ではなく、時々メガネの時間を多くするといった時間配分が眼障害を起こさない安全策です。あなたの現在の時間配分が適正か、角膜障害などないか、眼科専門医で確認してください。