緑内障について

ポリシー

当院では緑内障は早期発見が大事と考え従来の眼圧、精密視野検査に加えてOCT(網膜断層像)による視神経乳頭周囲の網膜厚の解析や、ステレオ撮影により視神経乳頭の立体的(3D)な観察でより早期発見が可能となるよう最新の眼底カメラを導入しました。

点眼治療では効果判定のために視野変化の評価プログラムを導入し、視野変化の客観的な評価ができるようにしました。日々の診療では緑内障の患者さんに対して病気をこわがらない安心感をあたえる長期的な点眼指導と経過観察を心がけています。

0.緑内障とは

緑内障とは眼圧の影響で網膜の神経が少しずつ抜け落ちるように減っていく病気です。最新の疫学調査では40才以上の成人の17にひとりが緑内障と言われています。60才以上になると更に緑内障の方の割合が増えます。網膜の神経がたくさん減ると、見える範囲が狭くなったり、視力が下がったりします。進行は5年~10年かかってゆっくりと進むことが多いです。

治療の主役は点眼治療で、点眼液で眼圧を下げ神経が脱落するのを防ぐことが中心です。いったん減ってしまった網膜の神経は復活しませんので、なるべく早く発見して(早期発見)早い時期に点眼治療を始める(早期治療)のが大事です。緑内障と診断されて点眼開始となったら、ずっと点眼治療を継続する必要があります。途中で中断せず、長期間点眼をがんばるのが大事です。早期発見された場合は点眼治療によって視野が維持され、失明はまれだと考えてよいです。

1.早期発見のために

早期発見のために視神経乳頭を拡大して見ることを心がけています。

  • 細隙灯顕微鏡と前置レンズによる視神経乳頭の拡大 立体観察
  • 赤、緑の固視標と約10D相当の特製単眼鏡レンズによる視神経乳頭拡大観察

 

また、

  • 視神経乳頭のステレオ立体撮影(ZEISS社 VISUCAMによる)(写真①)と立体写真の経過観察が視神経乳頭陥凹拡大の早期発見につながると考えています。
  • OCT(網膜断層像)による視神経乳頭周囲の網膜厚の三次元解析(ZEISS社シラスOCTによる)(写真②)も早期発見に寄与すると考えで、導入いたしました。

 

2.緑内障の診断

緑内障の診断は
  • 眼圧
  • 隅角検査
  • 視野変化(ハンフリー自動視野計)
  • 眼底観察
  • OCTなど

従来の眼圧と視野だけでなく網膜厚などの画像情報も参考に総合的に診断します。

眼圧計は風圧が低くコントロールされた最新のノンコンタクトトノメーター(ニデック トノレフⅡ)(写真a)を備えているほか、アプラネーショントノメータ、アイケアトノメータ(写真b)、ダイナミックカウンタートノメータ(写真c)(LASIK後の患者さん用)などを備えています。

視野計はハンフリーの自動視野計(写真③)とゴールドマン視野計を備えており、ハンフリー視野のデータ解析ソフト(B-ライン社)により、視野進行の判定を科学的に行うよう努めています。

3.緑内障の治療

点眼治療が基本です。重傷例では手術が必要になる場合がありますが、点眼薬の改良により手術が必要になる重傷例が減ってきています。まず点眼前の眼圧(ベースライン)を確認し、点眼により眼圧が下がっているかを観察します。確実に下がることを確認してこれを継続します。場合によっては1剤でなく2剤、3剤と必要になることもあります。毎日、長期間にわたり点眼を続けるのは大変ですが、視野を維持するためにがんばる必要があります。

点眼薬が効いているかどうかの判断は、最初の眼圧から約25~30%程度下がっているかや、視野進行の程度などから判定し、点眼薬を変更したり追加したりしていきます。普通、眼圧検査は1ヶ月から2ヶ月毎、視野検査は3ヶ月から6ヶ月毎に行うことが多いです。視野の進行はハンフリー視野計のデータ解析ソフト(B-ライン社)などを用いるとより客観的な評価が可能となります。

4.患者のQOLにあわせた点眼薬選択

視野変化がわずかな緑内障患者にはその患者に併せた点眼薬を選択、視野障害が進んだ重症患者では眼圧下降効果の強い点眼薬を複数選択するなど、個々の患者のQOLにあわせた点眼治療を目指しています。

5.病気をこわがらない安心感をあたえる長期的な点眼指導と経過観察

緑内障は一旦診断がついたあとは、ずっとお付き合いしていく慢性的な病気ですが、失明はまれです。緑内障だと言われたからといって自動的に重症化していくわけではありません。点眼治療により軽度~中等度の視野障害の方のほとんどの方が視野が維持されて不自由なく過ごされることが多いです。最新の点眼薬は眼圧下降効果が高いものが多く、視野障害の進行を食い止めることに寄与しています。

早期発見できた患者さんは最初から視野障害が軽度で、点眼により進行を食い止めることができるので、日常で不自由することはほとんどないと考えてよいです。

中等度の視野障害で見つかった患者さんは個々の目は視野障害が進んでいますが、両眼で見ると各々の目がお互いの視野欠損部を補っていることが多く、日常生活で、視野欠損部を上手にカバーするような目の使い方を心がけることで、安全に過ごすことが可能です。点眼は多剤併用療法が基本で、点眼回数や量も増えますので患者さんのがんばりが大事です。多剤併用療法によっても視野障害が進行性である場合は手術が必要になります。

発見が遅れ、かなり視野障害が進行した状態の患者さんもいますが、しっかりした点眼治療や、手術を行うことによって残された視野を維持することが大事になります。漠然と緑内障という病気を怖がったり、治らない重症な病気と考えて怖くなって眼科受診をためらったりする患者さんもいますが、緑内障は早く見つければ予後良好の病気だと思ってください。

OCTによる視神経乳頭周囲の網膜厚の三次元解析や、ハンフリー視野計のデータ解析ソフト(B-ライン社)の結果を組み合わせていくと、大まかな将来的な視野変化の予測を行うことができます。現状の評価だけでなく将来起こるであろう視野変化を予測することで、漠然とした不安を取り除くことができるかもしれません。また、将来の仕事や日常生活において、視機能を中心とした生活設計を描くことができるため、長期的な見通しを持つことができ、このことが逆に安心感につながる可能性があります。